遺産分割協議書の書き方|見本と財産別・ケース別の文例

相続手続き

2026.09.30

遺産分割協議書の書き方|見本と財産別・ケース別の文例

「遺産分割協議書には何を書けばよい?」「預貯金や不動産の分け方をどう記載する?」と迷っていませんか。

ひな形を見つけても、自分の相続に合う内容か、署名・押印の方法に不備がないか不安を感じる方もいるでしょう。

本記事では、遺産分割協議書の完成見本と、財産別・ケース別の書き方を文例付きで解説します。 

手書きや実印の扱い、銀行・法務局への提出前の確認事項、専門家へ相談すべきケースも整理しました。

初めて作成する方も、必要な記載事項と確認の順序を押さえ、書類作成を進めるためにお役立てください。

この記事の結論
遺産分割協議書は、相続人が合意した遺産の分け方を書面にしたもので、自分で作成することも可能です。

大切なのは、「誰が・どの財産を・どれだけ取得するか」を明確にし、銀行や法務局などの提出先で使える形に整えることです。
まず完成見本で全体像をつかみ、財産別・ケース別の文例から、自分の相続に合う部分を選びましょう。

署名を集める前に相続人・対象財産・分割内容を確認し、争いや複雑な分け方がある場合は専門家へ相談してください。

遺産分割協議書の書き方がわかる完成見本

遺産分割協議書の書き方がわかる完成見本

まずは一通の完成見本を見ると、必要な情報と書類の組み立て方が分かります。

本文のひな形だけでなく、財産の表示と署名欄まで確認してください。

預貯金と不動産を分ける場合の完成見本

以下は、父・佐藤太郎を被相続人(亡くなった人)とする遺産分割協議書の完成見本です。

相続人は、妻の花子、長男の一郎、長女の美咲の3人のみとします。

全員が成年で、協議内容を理解して自ら意思表示でき、遺言書や相続放棄がなく、今回分ける財産と取得者について全員が合意しているケースを想定しています。

母が土地・建物、長男と長女がそれぞれ別の預金口座を取得する内容にしました。この配分を、税務上有利な分け方として推奨するものではありません。

完成見本(氏名・住所・財産情報は架空です)

※画像は書類の構成を示すための簡略図です。

遺産分割協議書

被相続人 佐藤太郎
死亡日 令和8年5月10日
最後の住所 札幌市〇〇区〇〇一丁目1番1号

上記被相続人の相続人である佐藤花子、佐藤一郎及び佐藤美咲は、被相続人の遺産について協議し、次のとおり分割することに合意した。

第1条 佐藤花子は、次の不動産を取得する。

【土地】
所在 札幌市〇〇区〇〇一丁目
地番 100番1
地目 宅地
地積 200.00平方メートル

【建物】
所在 札幌市〇〇区〇〇一丁目100番地1
家屋番号 100番1
種類 居宅
構造 木造亜鉛メッキ鋼板ぶき2階建
床面積 1階60.00平方メートル、2階50.00平方メートル

第2条 佐藤一郎は、次の預金及びその利息を取得する。
〇〇銀行〇〇支店 普通預金
口座番号 1111111
口座名義 佐藤太郎

第3条 佐藤美咲は、次の預金及びその利息を取得する。
△△銀行△△支店 普通預金
口座番号 2222222
口座名義 佐藤太郎

第4条 本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人全員で改めて協議する。

以上の合意を証するため、本書3通を作成し、各相続人が署名押印のうえ、各1通を保有する。

令和8年8月20日

住所 札幌市〇〇区〇〇一丁目1番1号
氏名 佐藤花子 実印

住所 札幌市〇〇区△△二丁目2番2号
氏名 佐藤一郎 実印

住所 札幌市〇〇区□□三丁目3番3号
氏名 佐藤美咲 実印

基本の記載項目とひな形の使い方

ひな形を使う際は、氏名だけでなく、対象財産・取得者・割合・補足条項まで確認することが重要です。

次の資料を手元にそろえると、転記ミスを防ぎやすくなります。

記載する内容確認する資料・情報
被相続人の氏名・死亡日戸籍等
被相続人の最後の住所又は本籍住民票の除票・戸籍の附票等
相続人の氏名・住所住所確認資料、印鑑証明書等
財産の内容登記事項証明書、通帳、残高証明書等
取得者・取得割合相続人全員が合意した分割内容
日付実際に協議が成立し、書面を作成した日

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これらは、本人・財産・合意内容を明確にするための基本項目です。すべてが一律に法律で定められた記載事項というわけではありません。

特に「その他一切の財産を長男が取得する」などの条項は、予定していなかった財産まで含む可能性があります。不要な条項を残さず、何が対象になるかを全員で確認しましょう。

作成前に確認|協議書の必要性と合意内容

作成前に確認|協議書の必要性と合意内容

遺産分割協議書は、すべての相続で必ず作成する書類ではありません。

遺言書の有無、相続人の人数、分け方、使用する手続きから必要性を判断しましょう。

遺産分割協議書が必要なケース・必要ないケース

協議書を使うのは、主に相続人同士で決めた取得者や分割内容を、書面で証明したい場合です。

代表的なケースを整理すると、次のようになります。

ケース協議書の必要性・確認事項
複数の相続人が話し合いで取得者を決める合意の記録や、銀行・相続登記などに使用する
相続人が一人で、ほかに協議すべき関係者がいない遺産を分ける協議は不要。ただし相続手続きの書類は別途必要
有効な遺言書に従って対象財産を承継する協議書を使わず手続きできる場合がある
法定相続分による相続登記をする通常、遺産分割協議書を使わずに申請できる
調停・審判で分割が決まっている調停調書や審判書等を使用し、提出先の条件を確認する

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「遺言書があるから、どの財産にも協議書は不要」とは限りません。遺言の対象外の財産がある場合などは、別途確認が必要です。

また、三菱UFJ銀行などでは、遺産分割協議書を作成せず、銀行所定の相続届等で手続きできる場合があります。

遺言書・相続人・対象財産・分け方を確認する

作成前には、①遺言書、②協議に参加すべき人、③今回分ける財産、④取得者・分け方を確認しましょう。相続人は家族の認識だけで決めず、戸籍等で確かめます。

ただし、全財産の分け方が決まるまで、何も作れないわけではありません。e-Gov法令検索「民法」第907条は、遺産の全部だけでなく一部の分割も認めています。

預貯金だけを先に分け、不動産を未分割で残すなら、対象を預貯金に限定してください。相続人の確定や合意に問題がある場合は、先に調査・相談を進める必要があります。

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財産別の書き方・文例|預貯金・不動産・株式など

財産別の書き方・文例|預貯金・不動産・株式など

財産の記載では、第三者が見ても「どの財産か」を識別できることが重要です。

ここでは財産そのものの書き方を示し、取得者や分配方法の工夫は次のケース別で説明します。

財産主な記載内容確認資料
預貯金金融機関・支店・種類・口座番号等通帳、残高証明書等
土地・建物登記上の表示、被相続人の持分登記事項証明書
マンション一棟・専有部分・敷地権等登記事項証明書
株式・投資信託証券会社、銘柄、株数・口数等残高証明書等
自動車登録番号・車台番号等車検証等
現金・貴金属等金額、品名、数量、識別情報財産一覧、現物、写真等

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以下は条項のみの文例です。実際の協議書では、「預貯金と不動産を分ける場合の完成見本」を参考に、被相続人の情報や署名・押印欄なども記載してください。

預貯金|金融機関・支店・預金種別・口座番号を記載する

一つの口座を一人が取得する場合は、金融機関・支店・預金種別・口座番号と取得者を明記します。通帳や残高証明書から正確に転記してください。

佐藤一郎は、被相続人名義の次の預金及びその利息を取得する。
金融機関・支店 〇〇銀行〇〇支店
預金種別 普通預金
口座番号 1111111
口座名義 佐藤太郎

ゆうちょ銀行の貯金は、次のように記号・番号で示す方法があります。

佐藤美咲は、被相続人名義のゆうちょ銀行の通常貯金及びその利子を取得する。
記号 〇〇〇〇〇
番号 〇〇〇〇〇〇〇〇
口座名義 佐藤太郎

口座が複数あるときは、取得者ごとに対象口座を列挙しましょう。「〇〇銀行の預金」だけでは、どの口座まで含むか分かりにくくなります。

金額を書く場合は、基準日と利息・差額の扱いにも注意が必要です。相続開始時の残高と、実際の払戻額が一致するとは限りません。

ゆうちょ銀行では、取引内容等に応じて必要書類を確認する仕組みがあります。協議書とは別の書類も含め、ゆうちょ銀行の相続手続きで確認してください。

土地・一戸建て|登記上の表示と被相続人の持分を記載する

不動産は、普段使う住所ではなく、登記事項証明書にある表示を使います。

土地と建物は別の不動産なので、一戸建てでも分けて記載しましょう。

以下は、被相続人が土地・建物を単独所有していた場合の文例です。

佐藤花子は、被相続人所有の次の土地及び建物を取得する。

【土地】
所在 札幌市〇〇区〇〇一丁目
地番 100番1
地目 宅地
地積 200.00平方メートル

【建物】
所在 札幌市〇〇区〇〇一丁目100番地1
家屋番号 100番1
種類 居宅
構造 木造亜鉛メッキ鋼板ぶき2階建
床面積 1階60.00平方メートル、2階50.00平方メートル

法務局の「相続登記①・遺産分割協議編」の記載例も確認し、所在・地番・家屋番号等を照合しましょう。

登記事項証明書では、不動産の表示に加え、所有者と持分(所有権の割合)も確認してください。

被相続人が土地・建物の持分をそれぞれ2分の1だけ所有していた場合は、文例の最初の一文を次のように変更します。

佐藤花子は、次の土地及び建物について、被相続人が有していた各持分2分の1を取得する。

この文章に続けて、対象となる土地・建物の表示を記載してください。相続するのは不動産全体ではなく、被相続人が所有していた持分です。

私道や別登記の建物があるときも、対象から漏れていないか確かめましょう。

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マンション|一棟の建物・専有部分・敷地権を記載する

マンションでは、部屋そのものと、敷地を利用する権利を区別して記載します。

以下は、被相続人が単独所有していた敷地権付き区分建物の例です。

佐藤花子は、被相続人所有の次の区分建物及びその敷地権を取得する。

【一棟の建物の表示】
所在 札幌市〇〇区△△二丁目200番地1
建物の名称 〇〇マンション

【専有部分の建物の表示】
家屋番号 △△二丁目200番1の301
建物の名称 301
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 3階部分70.00平方メートル

【敷地権の目的である土地の表示】
土地の符号 1
所在及び地番 札幌市〇〇区△△二丁目200番1
地目 宅地
地積 1,000.00平方メートル

【敷地権の表示】
土地の符号 1
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 100000分の7000

「〇〇マンション301号室」だけで済ませず、登記事項証明書にある各項目を使ってください。敷地権の割合は、相続人同士で決める取得割合とは別の情報です。

敷地権が登記されていない物件や、駐車場が別登記になっている物件には、この例をそのまま当てはめられません。

不動産の表示の読み取りや記載内容に迷う場合は、司法書士へ確認すると安心です。

株式・投資信託|証券会社・銘柄・数量を記載する

株式や投資信託は、評価額だけでなく、銘柄と株数・口数で特定します。

証券会社名、取扱店、口座番号も記載すると、管理先との照合がしやすくなります。

株式の文例

佐藤一郎は、被相続人名義の〇〇証券〇〇支店の口座(口座番号〇〇〇〇〇〇〇)にある、△△株式会社の普通株式100株を取得する。

投資信託の文例

佐藤美咲は、被相続人名義の〇〇証券〇〇支店の口座(口座番号〇〇〇〇〇〇〇)にある、□□ファンド100,000口を取得する。

残高証明書や取引残高報告書を見て書き換えましょう。資料作成後に株式分割等があった場合や、配当金・分配金・預り金が残っている場合は、その扱いも確認が必要です。

証券会社所定の書類や、承継先口座が必要になる場合もあります。SBI証券の「相続手続き」など、実際に利用する証券会社の条件を確認してください。

自動車|登録番号・車台番号で対象を特定する

自動車は、登録番号と車台番号を車検証等で確認して記載します。

国土交通省の遺産分割協議書様式にも、両方の記載欄があります。

佐藤一郎は、被相続人所有の次の自動車を取得する。
自動車登録番号 札幌〇〇〇 あ 〇〇〇〇
車台番号 〇〇〇-〇〇〇〇〇〇〇

車検証の「所有者」と「使用者」は分けて確認しましょう。被相続人が運転していても、ローン会社やリース会社が所有者になっていることがあるためです。

この例は登録自動車を想定しています。軽自動車や所有権留保のある車などは、同じ書類だけで手続きできると判断せず、登録先等へ必要書類を確認してください。

現金・貴金属など|金額・品名・数量で対象を特定する

現金は金額と保管場所、貴金属等は品名・数量・特徴を記載します。

ほかの家族の所有物まで含めないことが大切です。

佐藤花子は、被相続人が所有し、自宅金庫内に保管していた現金30万円を取得する。
佐藤美咲は、別紙財産目録第5項及び添付写真番号1で特定した、被相続人所有の金製腕時計1個を取得する。

同じような品物が複数ある場合は、製品番号や写真を使って財産目録と対応させると分かりやすくなります。

「家にある物一式」ではなく、高価なものや取得者が異なるものは明確に記載するようにしましょう。

生命保険金や未支給年金などは、受取人や帰属を保険会社や年金事務所に確認する必要があります。

現金に近いものだからという理由だけで、ここにまとめて記載しないようにしましょう。

ケース別の書き方・文例|一人が取得する場合や複数人で分ける場合

ケース別の書き方・文例|一人が取得する場合や複数人で分ける場合

分け方を書く際は、財産を取得する人と、手続きを担当する人を区別することが重要です。

「別紙財産目録」と記載する例では、実際に財産を特定した別紙を作成し、項目番号を合わせてください。金額・支払日・費用負担も、法定の条件ではなく合意内容に合わせて決める部分です。

複数の相続人のうち一人がすべて取得する場合

複数の相続人が合意して、特定の一人に財産を取得させる場合の文例です。

相続人が一人しかいないケースとは異なり、ほかの相続人の合意も必要になります。

佐藤一郎は、別紙財産目録に記載した被相続人の遺産をすべて取得する。

この例では、確認できた分割対象の財産をすべて目録に記載します。後日判明した財産も一郎が取得するのか、改めて協議するのかは、別の条項で整理してください。

ここで財産を取得しない合意は、家庭裁判所の相続放棄ではありません。把握できていない負債が心配な場合は、相続放棄も選択肢になります。

ただし、裁判所の「相続の放棄の申述」のとおり、相続放棄をすると、借金だけでなく預貯金や不動産なども相続できなくなります。

また、借金の負担者を相続人間で決めただけで、ほかの相続人が当然に債権者への責任を免れるわけではありません。

相続放棄を検討中なら、協議への署名や遺産の処分に進む前に専門家へ相談しましょう。

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代表者が預貯金を払い戻し、複数の相続人へ分配する場合

代表者が一度まとめて受け取る場合は、代表者が預金を全部取得するのではなく、合意した取得割合に従って分配することを明記します。

1.別紙財産目録第2項記載の預金の払戻金(利息を含む)は、佐藤花子が2分の1、佐藤一郎及び佐藤美咲が各4分の1の割合で取得する。

2.佐藤一郎を手続きの代表者とし、同人が当該預金の解約及び払戻金の受領を行う。

3.佐藤一郎は、払戻金の受領後14日以内に、佐藤花子及び佐藤美咲の取得額を、各人の指定口座へ振り込む。振込手数料は取得者が負担する。

4.佐藤花子及び佐藤美咲の取得額に生じる1円未満の端数は佐藤一郎が取得する。

実際には、金融機関がこの方法での払戻しに対応するか確認し、所定の相続届や委任書類も整えます。

分配後は払戻額と振込額が分かる資料を全員で共有しましょう。

代表者の口座を経由したことだけで「代表者からの贈与」と扱うのではなく、当初の合意と実際の資金移動を一致させることが重要です。

不動産を取得する人が他の相続人へ代償金を支払う場合(代償分割)

代償分割は、一人が不動産などの現物を取得し、その代わりに他の相続人へその分の金銭等を給付する義務を負う方法です。

財産の取得と代償金の支払いを、対応する条項として記載します。

1.佐藤一郎は、別紙財産目録第1項記載の土地及び建物を取得する。

2.佐藤一郎は、前項の取得の代償として、佐藤花子に600万円、佐藤美咲に300万円を、本協議成立から2ヶ月以内に各人の指定口座へ振り込んで支払う。振込手数料は佐藤一郎が負担する。

金額・支払日は説明用の設定です。物件の評価や資金準備を踏まえて合意し、支払いが遅れた場合の取扱いも必要に応じて確認してください。

国税庁の「代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」では、代償財産が相続税の課税価格に関係することが示されています。

相続預金を単に配るケースと混同せず、評価方法・支払条件・税務を専門家に確認しましょう。

不動産を売却し、代金を分ける場合(換価分割)

換価分割は、不動産を売却し、費用を差し引いた代金を相続人で分ける方法です。

以下に記載例を示します。

1.相続人全員は、別紙財産目録第1項記載の土地及び建物を売却し、その代金を分配することに合意する。売却のための相続登記は、佐藤花子名義にして行う。

2.売却価格その他の主要条件は相続人全員で決定し、佐藤一郎が売却の窓口として手続きを代表する。

3.売却代金から、仲介手数料、売買契約書の印紙代及び登記・測量費用を控除した残額を、佐藤花子が2分の1、佐藤一郎及び佐藤美咲が各4分の1の割合で分配する。各人の譲渡所得に係る税金は、各人が申告し負担することを確認する。

4.代金は佐藤一郎が代表して受領し、全額受領後14日以内に各人の指定口座へ分配する。佐藤花子及び佐藤美咲の取得額の1円未満の端数は切り捨て、端数相当額は佐藤一郎が取得し、振込手数料は取得者がそれぞれ負担する。

売買契約や登記に必要な署名・委任等は、別途確認が必要です。この文例だけで代表者が自由に売却できるわけではありません。

また、文例中で売却代金から差し引く費用は、相続人間で分配額を計算するための取決めです。その費用を税務上の取得費や譲渡費用として控除できるかは、別に確認してください。

参考:国税庁の「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」

不動産を複数の相続人で共有する場合

共有とは、一つの不動産を割合で共同所有することです。各人の持分を明記し、合計が相続する持分と一致するかを確認します。

被相続人が単独所有していた別紙財産目録第1項記載の土地及び建物は、佐藤花子が持分2分の1、佐藤一郎及び佐藤美咲が各持分4分の1を取得する。

被相続人自身が2分の1の持分しか所有していなかった場合は、計算が変わります。その持分を2人が等しく取得するなら、各人が取得するのは不動産全体の4分の1です。

協議で共有取得を確定させることと、未分割のまま法定相続分で登記することは区別してください。

「とりあえず共有にして、後で簡単に分け直せばよい」と考えず、今後の利用・売却の予定も話し合っておきましょう。

後日見つかった財産の扱いを定める場合

あとから判明した財産を再協議するのか、特定の人が取得するのかを決めておくと、その後の対応を整理しやすくなります。

再協議する場合の文例は次のとおりです。

本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、その遺産について相続人全員で改めて協議する。

特定の相続人に取得させる条項を設けるなら、その範囲と効果を全員が理解したうえで決めてください。

特に「存在は分かっているが、今回は分けない財産」と「まだ発見されていない財産」は別です。

一部分割の場合は「別紙財産目録第3項の土地は本協議の対象外とし、別途協議する」などと整理できます。

新たな財産が見つかれば、申告済みの相続税への影響も確認しましょう。後日判明した借金まで、財産の取得条項だけで処理できるとは限りません。

手書き・署名・押印の方法|実印・契印・郵送回覧の注意点

手書き・署名・押印の方法|実印・契印・郵送回覧の注意点

本文ができたら、全員が同じ内容を確認し、提出先に合う署名・押印を整える段階です。

協議の成立と、それを銀行や法務局へ証明するための条件は分けて考えましょう。

本文の作成方法と、相続人の署名・実印を確認する

協議書の本文は、手書きでもパソコン作成でも構いません。

パソコンで作る場合は、印刷した最終版を各相続人が確認し、署名して実印(市区町村で印鑑登録した印鑑)を押しましょう。氏名・住所は、添付する証明書の表記と照合してください。

国税庁の「配偶者の税額の軽減」に協議書を使う場合は、その写しと相続人全員の印鑑証明書を提出します。署名・押印は国税庁の取扱いに従い、原則として相続人等が自署し、実印で押印してください。

実印がないだけで協議が必ず無効になるわけではありませんが、手続きには提出先の条件を満たす書類が必要です。

本人が署名できない場合は家族の判断で代筆せず、対応方法を専門家へ確認しましょう。

複数ページの契印と作成通数・原本の管理

複数ページになる場合は、本文と財産目録が一体の書面であると分かるように整えます。 

基本的な作成方法は、用紙を綴じ、ページのつなぎ目に相続人全員が各自の署名欄と同じ実印で契印する形です。製本方法によって押印位置が異なるため、提出先の案内に合わせて整えてください。

契印はページの連続性を示すための押印で、複数の原本の対応関係を示す割印とは目的が異なります。

作成通数は、提出先や原本返却の扱いを確認して決めましょう。

例えば、相続人が3人なら、協議書を3通作成して各自が1通ずつ保管する方法があります。 ただし、必ず相続人数分の原本を作成する必要があるわけではありません。

原本の所在を決めたうえで、全員が確認できる控えも残すと管理しやすくなります。

遠方の相続人と郵送で署名・押印を進める

全員が同じ日時・場所に集まらなくても、内容を確認して郵送で署名・押印を進められます。

ただし、同席できないことと合意していないことは別です。

  1. 文案を全員へ共有し、修正点を確認する。
  2. 全員が同意した最終版を固定し、原本を準備する。
  3. 署名・押印箇所、必要な同封書類、返送先を示して回覧する。
  4. 返送後に不備と添付書類を確認し、原本・控えを保管する。

郵送は追跡できる方法を検討し、作成日や版番号で文書を識別しましょう。

回覧途中で本文を変更すると、誰がどの内容に同意したか不明確になります。

また、返事のない相続人を、同意したものとして扱うことはできません。

各人が別々に作成する「遺産分割協議証明書」を使う方法を検討する場合は、文面と提出先の取扱いを事前に確認してください。

署名・提出前の最終確認|不備と提出先の条件をチェック

署名・提出前の最終確認|不備と提出先の条件をチェック

協議書が完成しても、それだけで名義変更や払戻しが終わるわけではありません。

提出先の追加書類、原本の扱い、誤記の有無、関連手続きの期限を確認してください。

銀行・証券会社・法務局・税務署の確認事項

確認項目は、どこで協議書を使うかによって異なります。

署名後のやり直しを減らすため、利用する窓口の条件を先に確認しましょう。

提出・使用先協議書に関する確認事項
銀行・証券会社対象口座・資産、承継人、所定書類、署名・押印、証明書の期限
法務局不動産の表示、取得者・持分、実印・印鑑証明書、原本還付の方法
税務署申告内容や特例に応じた協議書の写し・添付資料

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原本還付とは、所定の方法で提出した原本の返却を受けることです。複数の手続きで使うなら、返却の可否と提出順も確認しましょう。

印鑑証明書の期限は一律ではありません。遺産分割協議書に添付して相続登記に使う印鑑証明書には、法務局の記載例のとおり、作成後3か月以内という制限はありません。

一方、三菱UFJ銀行では原則6か月以内ですが、被相続人名義の借入れがある場合は3か月以内です。他の金融機関にも同じ条件が当てはまるとは限らないため、取得前に確かめてください。

国税庁の「配偶者の税額の軽減」を受けるために遺産分割協議書の写しを提出する場合は、相続人全員の印鑑証明書を添付します。

必要な添付書類や原本・写しの扱いは、申告内容や利用する特例に応じて確認してください。

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銀行の相続手続きと必要書類

誤記の訂正と、内容を変更して作り直す場合の違い

誤字の訂正と、取得者・財産・金額・持分の変更は別の問題です。署名前なら修正した最終版を全員へ共有し、確認し直しましょう。

署名後の誤記は、内容と提出先に応じた訂正方法を確認します。

捨印や二重線があれば何でも変更できると考えず、重要な箇所は全員の再確認と再作成を検討してください。

すでに分割された財産を別の相続人へ移すと、贈与税などがかかる場合があります。 全員が合意していても、分け方を変更する前に税理士へ確認しましょう。

提出・保管と相続税申告・相続登記の期限を確認する

確認は、署名前・提出前・手続き完了後の3段階に分けると漏れを減らせます。

段階チェックすること
署名前相続人の漏れがないか
対象財産と取得者・割合が明確か
全員が同じ文案を確認したか
提出前署名・印影・証明書に不整合がないか
添付書類がそろったか
原本・写しの必要数を確認したか
手続き完了後払戻し・分配・登記が完了したか
返却される原本を受領したか
保管場所を共有したか

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相続税の申告が必要な場合は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します。国税庁の説明のとおり、遺産分割が終わっていなくても期限は延びません。

相続登記は、原則として自分が不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請が必要です。2024年4月1日より前から取得を知っていた不動産は、原則2027年3月31日が期限となります。

法定相続分の登記や相続人申告登記を済ませていても、遺産分割の日から3年以内に改めて登記が必要になる場合があります。協議の完了を待たず、期限を確認しましょう。 

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相続登記の期限

自分で作成できる範囲と専門家に確認すべきケース

自分で作成できる範囲と専門家に確認すべきケース

相続関係と分け方が単純で、全員の合意がある場合は自作を検討できます。

ただし、代理人・紛争・複雑な税務判断が関係するときは、署名を集める前に確認する方が適切です。

相続関係が複雑な場合や、合意・代理人の確認が必要な場合

相続人が誰か、誰が有効に合意できるかに不明点がある場合は、ひな形を埋める作業より確認を優先してください。

状況確認すること
親権者と未成年者がともに相続人利益相反となる場合の特別代理人
判断能力に懸念がある相続人がいる成年後見等の必要性、本人の意思、代理権
相続人が行方不明不在者財産管理人などの手続き
分け方に合意できない弁護士相談、遺産分割調停等
遺言と異なる分割、相続人の死亡が重なるケース協議参加者・権利関係
代償分割・換価分割、期限が近い支払条件、登記、税務、優先すべき手続き

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未成年者と親権者の利益相反については、裁判所の「特別代理人選任」を確認します。また、裁判所の「不在者財産管理人選任」では、管理人による遺産分割には権限外行為許可も必要とされています。

財産が少ないだけで簡単とは限りません。逆に、相続税申告が必要という理由だけで、協議書の自作が禁止されるわけでもありません。

相談内容に合う専門家を選び、分割案と資料を整理する

相談先は、書類作成だけでなく、その先に必要な手続きや問題から選びましょう。

主な相談内容相談先の目安
相続人間の争い、交渉、遺産分割の法的問題弁護士
相続登記と、そのための書類作成司法書士
相続税申告、代償分割・換価分割などの税務税理士
他士業の独占業務に当たらない範囲での合意内容の書面化行政書士

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行政書士への依頼は、日本行政書士会連合会の説明のとおり、法的紛争・税務・登記申請業務を除く書類作成などが対象です。

相談前に、遺言書の有無、相続人・財産の情報、分割案、提出先・期限を整理しましょう。資料がすべてそろっていなくても相談できます。

協議書の作成や相談先に迷う方は、無料相談・LINE相談をご利用ください。

遺産分割協議書の書き方に関するよくある質問

遺産分割協議書の書き方に関するよくある質問

遺産分割協議書の作成・保管に関するよくある質問にお答えします。

一部の財産だけを分ける場合や協議書を紛失した場合、海外在住の相続人がいる場合の対応をまとめました。

一部の財産だけ先に分けたり、財産ごとに協議書を作成したりできますか?

遺産の一部を先に分割することはできます。

民法第907条に基づき、預貯金と不動産などを分けて協議する方法も考えられます。

対象と未分割の財産を明確にし、複数の協議書で同じ財産を別人に取得させないよう注意しましょう。

相続税の特例を利用する場合は、部分的な分割で要件を満たせるかも確認が必要です。

署名・押印済みの遺産分割協議書を紛失したらどうすればよいですか?

まず、他の相続人や作成を依頼した専門家が保管する原本・控えを確認してください。

コピーで対応できるか、改めて書面を整える必要があるかは提出先によって異なります。

紛失したからといって、成立済みの合意が当然に消えるわけではありません。

同じ合意を確認する書面の再作成と、取得者を変更する再分割を区別して対応しましょう。

海外在住の相続人が印鑑証明書を用意できない場合はどうしますか?

日本に住民登録のない海外在住の日本人は、在外公館の署名証明を利用する方法があります。形式は提出先に確認してください。

署名証明では領事の面前で署名するため、事前に署名してはいけません。

外国籍の相続人などは同じ方法を使えるとは限らず、提出先や現地公証人等への確認が必要です。

まとめ|自分のケースに合う文例を選び、署名前に確認する

遺産分割協議書は、文例をそのまま写すのではなく、実際の財産・分け方・提出先に合わせて作成することが重要です。

相続人と対象財産を確認し、財産別・ケース別の文例を選んだうえで、資料から正確に書き換えましょう。

最終版は全員で確認し、署名・押印、添付書類、提出後の手続きまで管理してください。

合意や代理人、代償分割・換価分割などに不安がある場合は、署名を集める前に適切な専門家へ相談しましょう。

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